連載企画「私の施術家への道」 10
大きな決断・・・、それは本格的に独立するための準備の事です。
これまでの私は、夕方まで接骨院で施術を行い、その後、カイロの専門学校で勉強という毎日でした。
それが、学校の卒業により夕方以降時間が空く事になります。
その空いた時間をどうするのか考えると、家でゆっくり過ごすのではなく、「出張施術」という形で患者さんの家にお邪魔して施術を行い、経験を積む事にしたのです!
この「出張施術」自体この世界では、特に珍しいものではありません。
ある程度の腕に自信のあるものの、まだ完全に独立するのに費用と人脈が足らない場合に、行う人が多い様に思います。
独立し、いきなり店舗を借りて、すぐに安定すれば問題はないのでしょうが、そうそう上手くいくものではありません。
患者さんが来てくれずに、維持費用が半年も持たずに退去した整体院は沢山あります。
そうなるのを防ぐためには、独立後、すぐに来院してくれる患者さんが居てくれればよいのです。
そんな患者さんと知り合う場を作るために、出張施術をする方も多く居られるのです。
私の場合は、以上の理由よりも、実費施術の腕を磨く事を重視しました。
どういう事かというと、今までの接骨院ではひとりの患者さんに対して時間が20分前後で施術しなければなりません。
その時間で効果が上がれば良いのですが、当時の能力不足の私では、施術効果が感じられなかった患者さんも多く居られたはずです。
しかし、保険治療の場合、1回当たりの施術料が比較的安く感じる為か、患者さんもそれに対してあまり何も言いません。
施術者の気持としては、最初は患者さんに対して申し訳ない気持になるのですが、それが続くと施術効果が無くてもそんなに気にする事が無くなってくるのです。
ある時、そんな気持になっている私自身に気が付きました!
そんな自分に危機感を覚え、言い逃れが出来ない、実費施術を行おうと思い、費用のかからない出張施術をする事にしたのです。
ここで出張施術の流れを、簡単に説明しますと、まず最初に、出張施術のビラを各家庭にポスティング。
そのビラを見た方から、連絡を貰い、ベッド持参でその方のお宅にお伺いして施術をさせて頂きます。
施術料は、本来なら移動費込みなので、普通の施術料より多めに貰うべきですが、私の場合、今の施術料より安めに設定していました。
今考えれば、バカ安でしたね!
でも、お金というより、自分の腕を実費施術の腕にするため、修行の場という意味合いもありましたので、これはこれで良かったと思います。
今振り返ってみれば、この時期が一番きつかったかも知れませんね。
「出張施術」と簡単に思いつきましたが、ひとりで患者さんのお宅にお邪魔するという事は、もの凄く不安な事でした。
(どんな人がでてくるんだろう?怖そうな人でないなら良いな)と当初はそればかり考えていました。(笑)
こんな経験をしたので、今現在、初めて整体院に来られる患者さんの気持も分るのです。
患者さんも当時の私と同じで、(怖い先生ならどうしよう)と不安に思っている筈です。
そんな不安な気持を少しでも解消して欲しいと思い、出来るだけの笑顔でお迎えしているつもりです。(出来ていなければ、ゴメンナサイ)
話が飛びすぎましたね!次号では、もっと詳しく出張施術時の経験を掲載したいと思いますので、お楽しみに!
以上です!
連載企画「私の施術家への道」 11
初めての出張施術!
出張施術をする事にしたものの、施術依頼が来なければ、何にもなりません。
そこで、マンションや一戸建ての郵便受けに入れて回るポスティングを始める事にしました。
まずは、チラシの作成。今まで家に入っていたチラシを参考にしながら、PCで作る事にしましたが、これがなかなか上手くいきません。
試行錯誤して作ったものの、今見れば、正直(これで電話してくれるわけ無いよな)と思えるようなチラシでした。
それでも、出来上がったチラシを、プリンタで数百枚印刷して、ポスティングをし始めました。
ここで思っても見なかった事がありました。
ポスティングが最初は恥ずかしいのです!
ひとりでポスティングしていると、どうしても人の目が気になり、(怪しいと思われてないかな?)等と不安な気持ちが頭に浮かんで、仕方ありませんでした。
続ける内に恥ずかしさは無くなりましたが、(怪しい人)と思われないようにする為、後にネクタイ着用で配り続けた事を思い出されます。
しかし、いくらポスティングしてもなかなか電話は掛ってきません。
そこで、出張施術の経験のあるカイロ学校の友人に相談すると、チラシの作り直しの提案と、ポスティングする時に、心を込めて配る事もアドバイスしてくれたのです。
そのアドバイスに従って、何度も作り直し、心を込めてポスティングを続けると、ようやく1ヶ月後、私の携帯に、施術依頼の着信が!!
この時、嬉しかったのですが同時に不安も感じたのが正直なところです。電話は、本人からではなく、その方の奥さんからの電話でした。
「主人が身体全体が痛くて、怠いと言ってるので、来てくれませんか?」
場所と日時を確認して電話を切ったのですが、患者さん本人と話していない事もあり、不安感は増大。
その日は、接骨院で施術しても集中力を保つのが難しかった事を思えています。
初めての出張施術なので、準備を万全にして当日を迎えました。
既に下見はしてあったので、迷う心配はないものの、渋滞に巻き込まれて遅れてはいけないと思い、早めに出発しました。
が、結局約束より30分前に着いてしまい、車の中で時間を潰すはめに。
患者さんのご自宅は、大きくて立派でした。
その分、緊張感が増大しました!
10分前になり、ドキドキしながら、インターホンを押す私。
すぐに奥さんが出てきてくれて、大きな部屋に通してくれました。
そして、「主人は今お風呂に入ってますので、ここでしばらくお待ち下さいね」と言って部屋から出て行かれました。
(少し来るのが早すぎたかな?)と思いながらも、すぐに施術用の組み立てベッドを広げて準備を開始!
深呼吸をしながら、初めての出張施術の患者さんを部屋で待っていました。
しばらくすると、患者さんが入ってこられました。
大柄で、一見怖そうに見えるものの、目が優しそうで緊張感が取れました。
それより、もっと気になる事が・・・。
部屋に入ってきたのは、その方だけでは無かったのです。
何と、大きな犬と一緒に入ってきたのです!
「この犬が私から離れたがらないので、一緒にいても良いですか?」
遠慮がちに訊いてきたので、仕方なく、犬と一緒に施術する事になりました。
が、犬のお陰で私も肩の力を抜く事が出来ました!
施術後、その効果を気に入ってくれた患者さんから、週1回の割合で出張施術の依頼をしてくれたので、喜んで快諾しました!
これを切掛けに、出張施術の電話は少しずつですが、掛るようになって来はじめたのです。
週1件の施術予定が2件、3件と増えるようになり、順調そうに見えました。
でも、当時少し複雑な気分になっていたのです。
それは・・・・
連載企画「私の施術家への道」 12
第12回:出張施術の注意点
当時は現在の「エネルギー療法」のスタイルが出来ていなかった事もあり、その時の施術は「治療」より「癒し」の方に向いてしまったのです。
私としては、「治療」に重点を置きたかったので、複雑な気分になってしまったのです。
今の施術の柱になっているエネルギー療法をマスターするまで、このモヤモヤ感はしばらく続くのですが、この時は、経験を積む為に必要な時期だったと今は感じています。
さて、この出張整体というのは、患者さんの自宅に治療用のベッドを持参して出かける訳なのですが、面白い(?)体験をいくつもしました。
今回は、その中から、紹介しても支障のでないケースを吟味して、ひとつをご紹介させて頂きますね!
ある日の事です。
男性から施術依頼の電話が鳴りました。
確か、腰痛、肩こりの症状だったと記憶しています。
他人を家に入れるという事で、男性からの電話が殆どでしたので、この時も違和感無しに施術を引き受けました。
ちなみに、女性からの連絡を受けた時は、今思えば、少し気を引き締めてから出かける事が多かったように思います。
と言うのも、セクハラで誤解を受ける可能性が女性の場合はあるからです。
その為、現在のように、施術中に手袋をはめる事により、患者さんの身体を直接触れないようにして、誤解を受けないよう工夫していたものです。
話しを戻しますね。
そんなわけで、出張施術にもある程度慣れてきた私は、相手が男性という事で緊張感の中にも、余裕を持って出かけました。
指定されて出かけた先は、高層マンションのひと部屋でした。
「ピンポ~ン」とインターホンを鳴らすと、男性がドアを開けて中に招き入れてくれました。
「こんにちは!」と挨拶して玄関口に入り、改めてその男性の顔を見ると、どこかで見た記憶があります。
瞬時に記憶を辿ると、昼に勤務している接骨院の患者さんである事が分りました。
それが分った時、正直言いまして、少し嫌な気持になってしまったのです。
私が出張施術をしているのは、接骨院に許可を得た上の事なので、別にやましい事はありません。
それよりも、この患者さんの事で、担当している施術スタッフからある相談を受けていた事に原因があるのです。
私は当時、出張施術しながら、接骨院に勤務していたのですが、年齢的な事もあり、責任者の立場におりました。
施術スタッフからの相談も受ける事も多々ありました。
スタッフ「相談があるのですが・・・」
私「何かあったの?」
スタッフ「私が担当しているAさんから、施術中に食事に誘われたり、手を握られるのです。どうしたらいいでしょうか?」
私「それは困ったな~。では、院のルールで、患者さんとスタッフは個人的な付合いを禁止されてると言う事にして、断わればいいよ。」
スタッフ「分りました。何かあれば、また報告します」
と言う内容の話しでした。
施術スタッフと患者さんとの間で、恋愛関係になる事は、どこの治療院でも実は珍しくありません。(残念ながら私は経験ありません(笑))
でも、今回相談してきたスタッフは男性スタッフなのです!
要するに、男性の患者さんが、男性スタッフの手を握って食事に誘ってきた事になるのです!
この相談の時は、スタッフの勘違いか、若しくはからかわれているだけかも知れないと思っていました。
しかし、こうして目の前で同性愛疑惑の患者さんと対峙すると、私にもいつもと違う緊張感が湧いてきました!
患者さんは、私の事は全く気付いていない様子。(いつも通りに、施術に来ただけだ!)と自分に言い聞かせながら、明るいトーンで、「どこで施術させて頂きましょうか?」と尋ねると、奥の部屋を案内してくれました。
その部屋を開けると、驚きの光景がそこには、広がっていたのです!
オレンジ色の間接照明の中、なんと大きなダブルベッドがド~ンと置いてあり、とても施術する雰囲気の部屋ではありません!
私は必死に、「持参したベッドで施術しますので、この部屋では無理ですよ!」と部屋に入る事を拒絶しました。
この時私の中では、疑惑が確信へと変わり、身の危険を感じていました!
何かされたら、どう逃げようか、どのようにして脱出しようか頭の中で、めまぐるしく考えていたのです!
すると今度は、ダイニングキッチンの方へ誘って来られました。
身構えながらついていくと、そこは普通の家庭の風景が広がっており、ホッと一安心。
そこには写真が飾られており、奥さんや子供の写真もありました。
子供のおもちゃがそこら中に散らばっており、怪しげな雰囲気は皆無です。
しかし、油断をしないで施術を開始!
施術中に話しをすると、たまたまこの時間に奥さんと子供が出かけているので、出張整体を頼んだ事が分かり、結局は私の勘違いのようでした!
今その時を振り返れば、笑い話しですが、その時は、ホントに怖かった~~!(苦笑)
そんなこんなで、よい経験も楽しい経験もさせて頂きました。
しかし、どうしても今の施術法では解決出来ない症状にもぶち当たり、挫折と心折れる体験もしたのは事実です。
その時の苦い経験が、私を今の施術法、エネルギー療法を使う切っ掛けになりました。
言い換えれば、苦い経験があったお陰で、今の私があるわけです。